3連単が売れる理由

競輪の7賭け式の売上げシェアで示したように3連単は他の賭け式に比べて圧倒的に売れている。本エントリではその理由を考察してみる。

優れた予想能力を持つ投票者にとって有利

3連単は最も有利な賭け式だで述べたように、レースギャンブルにおいてはより多くの選択肢を持つ賭けの方が投票者の予想能力を発揮しやすい。例えば2車単は1着、2着を当てる能力が必要だが、3連単はそれらに3着を当てる能力が加わる。優れた予想能力を持つ投票者は3着を当てることで他の投票者に差をつけるチャンスが生まれる。反対に言えば、能力の劣る投票者は不利な3着を選んでしまうので2車単より大きく負けることになる。

以上の事実に気づいた優秀な投票者は3連単を買うようになったのだろう。また、はっきりと理論的に理解していなくとも3連単の方が良い結果を残せると分かった者もいただろう。さらに、3連単の結果がはっきり良くなったわけではないが2車単よりもこっちの方が勝つチャンスが大きいと感じて3連単を買うようになった者が多数いるんじゃないかと思う。ギャンブルでは集団が勝てそうな雰囲気を感じて行動を変えることがあると思う。

比較的高い配当倍率でも回収率が低下しない

3連単は高い配当倍率の結果になることが多い。2車単ではめったにでない数百倍〜千倍の配当もめずらしくない。少額の賭け金で大金を得る一攫千金の夢はギャンブルの基本的な魅力であり、3連単はそれを提供したのである。これには多くの人が同意すると思うが、私はさらに回収率との関係から分析を進めたい。

3連単と2車単のオッズによる回収率で示したデータを元にする。ここでは、車券を配当倍率の範囲で分類し、その範囲にある車券を多数のレースで全て買うと回収率がどうなるかを調べている。その結果は下のグラフで表される。横軸が対数目盛で表示されていることに注意されたい。

再掲図1

詳しくは元エントリを読んでもらうとして簡単に図1を説明すると、曲線が右下がりになっていることから、配当倍率が高い車券ほど回収率が低くなることが分かる。3連単は2車単より回収率の低下の傾きが小さいので、同じ配当倍率なら3連単の方が2車単より回収率が明らかに高い車券が多数存在することになる。図から見て配当倍率が100〜1000倍の領域だ。同じ程度の高配当車券を買うなら平均して3連単の方が高い回収率を得られるのだから3連単に人気が出るわけである。

このように高配当車券は回収率が低下するバイアスがあるため、2車単では少々予想能力が高くても穴車券で勝つのは非常にむずかしかった。3連単の登場でこのバイアスの影響をあまり受けない高配当の領域が大きく広がり、穴を狙う真剣な投票者の意欲を大きく刺激したと考えられる。

2車単では皆が買いたがる高配当の目を少数しか供給できなかったため不当に回収率が低下していた。3連単はその状況を大きく改善したのである。