落車、失格の推移(〜2013年)

しばらく落車/失格の統計を書いてなかったので調べてみた。ソースは落車、失格の発生頻度の時間的推移 - 競輪雑考を参照されたい。2002年以降は競輪見太郎のデータを私が勝手に集計したものである。

年度 レース数 落車人数 落車レース数 失格レース数 落車率(%) 失格率(%)
1988 39549 5903 3112 2085 7.87 5.27
1989 39931 6233 3223 1615 8.07 4.04
1990 39720 5599 2944 1593 7.41 4.01
1991 40039 4777 2535 1723 6.33 4.30
1992 39915 4534 2397 1805 6.01 4.52
1993 40249 4407 2317 1815 5.76 4.51
1994 39722 4267 2322 1945 5.85 4.90
1995 39837 2871 1533 1469 3.85 3.69
1996 39791 3198 1722 1563 4.33 3.93
1997 39633 3371 1763 1502 4.45 3.79
1998 39549 3527 1857 1568 4.70 3.96
1999 38554 3778 1975 1601 5.12 4.15
2000 38158 4096 2142 1631 5.61 4.27
2001 - - - - - -
2002 35663 4272 2301 1670 6.45 4.68
2003 35599 4428 2371 1722 6.66 4.84
2004 35567 4024 2196 1791 6.17 5.04
2005 34772 3985 2176 1562 6.26 4.49
2006 32153 4115 2199 1473 6.84 4.58
2007 32729 3920 2129 1403 6.50 4.29
2008 32994 3954 2116 1350 6.41 4.09
2009 32404 3764 2072 1263 6.39 3.90
2010 31791 3662 2009 1196 6.32 3.76
2011 28176 3281 1820 1070 6.46 3.80
2012 28331 3219 1767 947 6.24 3.34
(2013) 23373 2792 1535 842 6.57 3.60

落車率とはレース単位の落車の発生率である。例えば、100個レース中5個レースで落車が起きれば落車率は5%になる。失格率も同様だ。

2013年はまだ終わってないので、2013年11月8日までに終了した開催のレースを対象にしている。例年11、12月は落車は減るので、この表の数字は若干高めに出ていると思われる。

プロットすると以下になる。

ここ10年以上落車率はほぼ一定になっているのが分かる。「近年ギアが上がって落車が増えた」という意見をよく聞くが、実際には落車が多くなってるわけではない。

7車立チャレンジ戦の売上(2)

2012年からF2開催のチャレンジ戦が7車立になった。これによる売上への影響を7車立チャレンジ戦の売上(1) - 競輪雑考で調べたが、今回はその続編である。6ヶ月間のデータを調べた結果、ほんの少しチャレンジが売れなくなっているが、影響はほとんどないことが分かった。

チャレンジ戦の売上の割合

F2開催の全売上に対するチャレンジ戦の売上の割合を2011年と比べる。

競輪見太郎のデータを元に集計すると、2011年に行われた全ての通常のF2開催の売上に対するチャレンジ戦の占める割合は、26.8%だった。これに対して、2012年のF2開催(1月から6月までの239開催)では、26.2%であった。

0.6ポイントだけチャレンジ戦の売上割合がわずかに減少しているが、大きな変化は無かったと言える。

チャレンジ戦の客は、7車立になっても堅い本命レースが増えても、ほとんど気にしないで前と同じだけ車券を買うようだ。

公営競技の年度売上げの推移(1989-2011)

売上の推移

2011年度(4月-3月)の各公営競技の売上を前年のとともに以下に示す。

(単位:億円)
年度 中央競馬 競艇 競輪 地方競馬 オート
2010 24275 8434 6349 3332 861
2011 22935 9198 6229 3314 843

1989年からの売上は過去記事を参照されたい。

公営競技の年度売上げの推移 - 競輪雑考
公営競技の年度売上げの推移(1989-2009) - 競輪雑考
公営競技の年度売上げの推移(1989-2010) - 競輪雑考

売上の推移をプロットする。なお、2009年度以降の中央競馬については、4月-3月の値が分からなかったので、1月-12月で代用してある。

また、売上げの前年度に対する増加率を算出してプロットする。

震災による激しい落ち込みの翌年なので、どの競技も前年からの減少幅は小さい。特に競艇は9%ほどの増加に転じている。

地方4競技の売上げシェア

次に、中央競馬を除いた地方4競技の総売上げに対する各競技の売上げの割合を見てみる。

競輪と競艇が同じくらいの売上だったのはもう過去の話で、両者の差はますます広がる傾向にある。

競輪は下位選手によるF2開催がほとんど赤字になってしまうので、経営改善するには開催削減が有効だ。個人的には非常に残念だが、これは仕方ないだろう。選手数もどんどん減って実働で3000人を割っている。業界をうまく縮小均衡にもっていって欲しい。

7車立チャレンジ戦の売上(1)

2012年からF2開催のチャレンジ戦が7車立で行われている。まだ1ヶ月余りの短い期間ではあるが、チャレンジ戦の売上がどう変化したか調べてみた。

チャレンジ戦の売上の割合

2011年と今年のデータを比べるのだが、売上そのものの増減を見てもよく分からない。なぜなら売上は開催場や日程など非常に多くの要因で変化するので、7車立化の影響がどの程度なのか判断することができないからだ。

そこで、F2開催の全売上に対するチャレンジ戦の売上の割合を比べることにした。もし7車立が客に好まれているならチャレンジの売上割合は上がるだろし、そうでないなら下がるだろう。チャレンジ戦の売上割合が変わるなら、それは7車立化の影響とほぼ断定できる。

競輪見太郎のデータを元に集計すると、2011年に行われた全ての通常のF2開催の売上に対するチャレンジ戦の占める割合は、26.8%だった。これに対して、2012年のF2開催(2月2日までに終了した43個開催)では、27.5%であった。

わずかにチャレンジ戦の割合が上がっている。しかし、2012年からはA級12班戦のレース数が7個から6個に減っていて、この影響を考えるとわずかなチャレンジ戦の上昇は説明ができるだろう。よって、7車立化はほとんど売上割合に変化を及ぼさなかったと言える。

堅い本命レースの増加

7車立化によってレースは堅くなる。堅い本命レースが増えていることをデータで見てみよう。2車単と3連単を合わせた投票で1着の支持率1位の選手を本命としたとき、その本命選手の勝率を調べた。2011年のチャレンジ戦全体では、46.7%であったのが、2012年は58.8%と12.1ポイントも増加している。また、オール予選のため特に堅いレースの多い初日に限ってみれば、2011年は52.4%だったのが、2012年には62.3%になっている。

やはり7車立化でレースはかなり堅くなっている。本命が平均で6割近くも勝つのは驚きだ。KPK以後では断トツで堅い概定番組だろう。

3連単の売上シェア

次に、賭け式ごとの売上が変化したかを調べた。現在最も売れている3連単の売上シェアを比べた。2011年のチャレンジ戦の3連単の売上シェアは69.3%であり、2012年には72.0%になっている。2.7ポイントだけ上昇している。7車立で目の数が減ったため3連単に移ってきたと考えられる。ただ、大きくは変わらない。

変化しない投票

9車立と7車立ではレースの内容が大きく変わっている。7車立はレース展開が単調になり本線が有利になりやすく、堅いレースが多くなる。上で見たように実際とても堅い。競技としても賭けとしても性質が大きく変わっているのだ。にもかかわらずチャレンジの売上割合はほとんど同じである。

F2に通う競輪客は、レース内容や本命レース/穴レースに関係なく、賭け式を大きく変えることもなく、同じように買う保守性があるようだ。

7車立チャレンジが始まる前、あまりにも堅いレースばかりになるので賭けとして魅力が削がれ売上は減る、と私は予測していた。レースが堅いかそうでないかで売上は変わらないという結果を得ていたが(堅い本命レースは売上が上がるか? - 競輪雑考)、それにも限度があると思ったのだ。私の予測は間違いだった。

しかしまた、混戦レースよりも分かりやすい堅い本命レースの方が売れる、と考えてた人も正しくなかったことになる。

7車立は許容されるのか

売上が減らないなら経営的には賞金が少ない7車立の方が良い、と考えるのは疑問だ。元々F2はほとんど赤字なので、9車立で開催日数を少なくした方が経費全体として小さくなる可能性が高い。

そして、A級12班戦やG開催で7車立が受け入れられるかは全くの未知数だ。もし主催者側がやりたいのなら、まず実験開催をして客の動向を見てからにすべきだろう。チャレンジ7車立化は、客が7車立を好むという意見が多かったからやったわけではなく、選手不足という主催者の都合で行った点が良くないと思う。

  • -

以上の分析はまだ始まって1ヶ月の段階でのものだ。長期的に検証していきたい。

堅い本命レースは売上が上がるか?

本命選手の力がダントツで皆がその選手で間違いないと思うような堅い本命レースは、他のレースに較べて売上が多いという話をよく聞く。大口で勝負する客が1番人気にどかんと張るから、あるいは、だれが勝つのか「分かりやすい」ので車券を買いやすいから売上が増えると言う。反対に、本命不在の実力伯仲の穴レースは、どれが来るか分からない難しいレースで売上が上がらないという意見もある。

これらの言説は本当だろうか。実際に競輪の売上のデータを調べて確かめてみた。

堅い本命

まず、堅い本命レースを次のように定義しよう。確定オッズで2車単の1番人気が低配当であるレースを堅い本命レースとする。例えば、2車単1番人気が2.0倍しかつかないレースは堅い本命レースである。

この1番人気はその目で決まったかどうかは関係ないことに注意されたい。レース結果に関わらずオッズで人気が偏っていれば本命レースとみなす。

データ

2010年に行われた31791個レースを対象とし、各レースについて、[2車単1番人気の配当倍率(=r), 売上(=v)]という2つ組のデータを用意する。[6.5, 35790]、[6.8, 145359]のようなデータが31791個できる。なお、売上は票数すなわち100円単位であり、全賭け式(重勝除く)の合計である。

これらはKEIRIN.JPで提供される競輪見太郎のデータから取得した。

本命/穴レースごとの売上

[r, v]のデータを2車単1番人気の配当倍率rによって10個のグループに分類する。[r, v]をrが小さい順にソートして、初めから1/10の個数を第1のグループにする。次の1/10を第2のグループに...という具合に全体を10個に分ける。

こうすると第1のグループは小さいrを持ち、すなわち堅い本命レースが集まる。5番目、6番目は普通で、10番目のグループは穴レースになる。この各グループの平均売上を見れば堅い本命レースが売れるのかが分かることになる。集計してみると以下の表を得る。

[ 表1 ]

グループ  1番人気の配当倍率r  売上vの平均(単位:万円)
          の平均
1         2.16                1300
2         2.96                1816
3         3.55                1858
4         4.10                1775
5         4.60                1993
6         5.10                2036
7         5.59                2332
8         6.18                2380
9         7.00                2763
10        8.88                3127
全体      4.97                2127

グループの番号が大きくなるにつれて、そのグループのrの平均も大きくなる。これはグループ分けの仕方からして当然である。各グループの売上を見てみよう。概ねrの平均が大きくなるほど、売上vの平均も上がっている。すなわち、穴レースほど売上は大きい。第10グループは全体の平均に較べて3127万円/2127万円=約1.47倍も売れている。これに対し、堅い本命レースの第1グループは全体の平均の1300万円/2127万円=約0.61倍しか売れていない。(なお後の説明のために、この第1グループの平均売上を全体の平均売上で割った値を本命選好度と呼ぶことにする。本命選好度が1を越えるほど本命レースが客に好まれて売れていることを示す。)

これはどういうことだろうか。「堅い本命レースは売れる」どころが全く逆である。

レースの格の影響

上の結果を見て、穴レースほど良く売れると早合点してはいけない。売上を左右するのはレースが堅いかどうかだけではなく、他に重要な要素があるからだ。次のように解釈するのが妥当だろう。

競輪はレースの格によって大きく売上が異なる。例えば、F2開催よりG3の方がはるかに売れる。格が上の開催ほど出場する選手は成績上位の者に限られるので、実力が同じくらいの選手が集まりやすい。その結果、格上の開催ほど穴レースが増えることになり、本命レースは少なくなる。また、同じ開催でも格上のレースの方が穴レースが多い傾向にある。例えばF2の初日特選は穴に、予選は本命レースになりやすい。

格上のレースほど売上が多く、格上のレースほど穴レースになりやすい傾向がある。だから、穴レースを集めると売上が多いレースが多くなるというわけだ。客は穴レースが好きだから表1のようになるのではなく、格上のレースが好きなだけでたまたま格上のレースに穴レースが多くあったというだけのことなのだ。

売上で分けて考える

格上のレースがよく売れるという強い影響を何とか除いて、本命/穴レースかどうかだけで売上を比較したい。そこで以下のようなやり方を行う。

データを売上が同じくらいのグループに分けて考える。[r, v]のデータをvによって50個のグループに分類する。[r, v]をvが小さい順にソートして、初めから1/50の個数を第1のグループにする。次の1/50を第2のグループに...という具合に全体を50個に分ける。

このようにして分けたグループは同じくらいの売上のレースの集合だから、レースの格も大体同じくらいになると考えられる。F2とG3のレースが同じグループになることはまずないだろう。

そしてこの売上vで分けたグループごとに、前でやったように1番人気の配当倍率rの順に10個に分類して分析する。表1のような集計結果が50個得られることになり、それぞれに本命選好度が得られる。

結果

上で説明したやり方で実際に50個の本命選好度を算出すると以下の表になる。

[ 表2 ]

グループ 売上vの平均  本命選好度
         (単位:万円)
1           79        1.020
2          108        1.008
3          128        0.996
4          145        0.999
5          161        1.000
6          177        0.998
7          192        1.000
8          207        0.999
9          223        0.998
10         238        1.002
11         253        1.000
12         269        0.999
13         285        0.999
14         301        1.000
15         320        1.001
16         339        0.998
17         359        1.001
18         379        1.001
19         401        0.998
20         426        0.997
21         451        0.999
22         477        1.000
23         506        1.001
24         535        0.999
25         568        1.000
26         603        1.000
27         639        1.001
28         678        0.996
29         724        1.006
30         776        0.998
31         830        1.001
32         889        0.998
33         957        0.995
34        1026        1.002
35        1108        1.003
36        1201        1.002
37        1300        1.003
38        1409        1.001
39        1540        0.996
40        1680        0.999
41        1846        0.998
42        2047        1.001
43        2303        0.996
44        2666        1.011
45        3212        1.002
46        4262        1.002
47        6328        0.974
48        9954        1.025
49       16451        1.004
50       34356        0.839

プロットすると以下になる。横軸の売上の平均は対数目盛を用いている。

この結果からまず分かることは、第50グループを除けばどの売上のグループでも本命選好度は1に非常に近い値になっていることである。すなわち堅い本命レースはそうでないレースに較べて特に売れていることもなく、反対に売れてないこともない。もし堅い本命レースが売れる傾向がはっきりあるとすれば、このプロットのどこかの領域で本命選好度が1を十分越えているはずだ。しかしそうはなってない。売上はレースが堅いかどうかとほとんど関係がないと言ってよい。

さらに細かいことを見ていこう。売上の平均が大きい領域では本命選好度が1からぶれる傾向がある。特にもっとも大きい第50グループでは0.839とここだけ1から大きく離れている。これは売上が大きいレースほど数が少ないので1つのグループの中でもレース間の売上に差が出てきてしまうことによる。大体同じ格のレースに分類するという目的が、大きな売上のレースのグループでは精度が落ちてくるということだ。

売上が最低の第1グループは本命選好度が1.020と比較的大きい。売上が最低レベルのレース(チャレンジの予選、一般クラス)では確かに本命が売れる傾向にある。

  • -

何らかの条件でレースを選ぶとそれらのレースでは本命レースが売れる傾向が認められる、という可能性までは否定しない。しかし全体としては、客は本命レースを好んでいるわけではないのは明らかだ。堅い番組を多くすれば売上が伸びるという考えは大いに疑問である。

extend-keirin-racememberに変更

KEIRIN.JPの出走表ページを便利にするGreasemonkeyスクリプト、extend-keirin-racememberに、以下に示す若干の変更を行った。

http://kzakko.web.fc2.com/extend-keirin-racemember.user.js

  • 選手の写真を、KEIRIN.JPストリームから取得した並び予想の順に並べているが、ラインの先頭あるいは単騎の選手の写真は枠を付けて表示するようにした。特に脚質="逃"の選手は赤枠にした。これで写真を見ただけで並びが把握できるようになった。
  • KEIRIN.JPストリームの並び予想が複数行で表されている場合、そのまま複数行で表示しているが、並走がないときは1行にまとめるようにした。
  • -

全45競輪場中、web上で何らかの形で無料の並び予想を公開しているのは熊本を除く44場になった。また、KEIRIN.JPストリームで並び予想を公開しているのは現在28場である。

  • -

2012-10-18 追記
2012年初めから熊本でもweb上で並びが出るようになった。

公営競技の年度売上げの推移(1989-2010)

売上の推移

2010年度(4月-3月)の各公営競技の売上は以下のように発表されている。ただし、中央競馬は4月-3月の値が分からなかったので1月-12月の値で代用している。

(単位:億円)
年度 中央競馬 競艇 競輪 地方競馬 オート
2010 24275 8434 6349 3332 861

1989年からのデータは公営競技の年度売上げの推移(1989-2009) - 競輪雑考で示してあり、これと合わせて売上の推移をプロットする。

また、売上げの前年度に対する増加率を算出してプロットする。

震災の影響もあって、各競技とも落ち込みが大きくなっているのが分かる。

地方4競技の売上げシェア

次に、中央競馬を除いた地方4競技の総売上げに対する各競技の売上げの割合を見てみる。

2004年くらいまでは4競技のシェアに大きな変化はなく一定であった。しかし、その後は競艇がシェアを伸ばし競輪が落ちていく傾向がはっきりして来た。

売上の減少が大きくなる競輪特有の理由として、開催日数の削減がある。手元の集計では仮に震災による開催中止がなかったとしても、2010年は2004年に較べて開催日数は80%以下にまで減っている。開催日数減は、赤字のF開催を減らして収益性を上げる戦略である。

競輪はまだまだ供給過剰の状態なのでシェアの落ち込みはこれからも続くだろう。