控除率25%は儲けるのに絶望的か?

前のエントリで控除率25%だからといって誰でも長期的に回収率が75%に収束するわけではなく、100%を越えることすなわち必勝法が存在する可能性だってあることを書いた。それでは競輪において長期的な回収率が十分100%を越えているような人が実際にいるのだろうか。この問題を考えてみる。

「常識的に考えて25%は高過ぎる」

例えば多くのカジノゲームでは控除率に相当するものが5%程度以下に設定されている。1%以下のゲームもある。それに比べて25%というのはえらい高い。

また、もし証券会社が購入代金の25%の手数料を取ったとしたら、誰も証券会社から株を買わないだろう。これで長期的に取り引きを繰り返して儲けるのはまず無理だろう。

こんな風に考えると、25%の控除率は非常識に高く、儲けるという目的で車券なんて買うのは全く絶望的にみえる。これで儲かるならカジノなんて楽勝のはずだ(でも実際そうでない)。よって、25%は高過ぎて必勝法はないと考えるのが妥当だと思えてくる。だが本当にそうだろうか。

いくら控除率が低くてもスキルゲームでないギャンブルは長期的に儲からない

ルーレットはカジノ側が最善の戦略を取れば客がどんな戦略を取っても期待回収率を100%以上にすることができない。これは理論的に証明される。よって、ルーレットの控除率に相当するものが5%程度と低くても、長期的に儲けることは誰もできず、すなわち必勝法は存在しない。客の最善の戦略が理論的に明らかであるようなスキルゲームでないギャンブルの低い控除率を、スキルゲームの控除率と比べることは、必勝法の存在を議論する上では意味がない。

選択肢が多い程、能力を発揮できるチャンスがある

スキルゲームであって控除率が低いギャンブルとしてスポーツベッティングがある。米国で人気のあるNFLの1試合の得点ハンディ付きの結果を当てるポイントスプレッド(PS)と呼ばれる形式を考える。競技スポーツの結果を当てるという競輪との共通性がある。PSの控除率に相当するものは約4.5%である。単純に比較すると、PSは控除率の点で競輪より圧倒的に有利であるように見えるが、私は必ずしもそうだと思わない。その理由は、PSが勝ち/負けの選択の2つの目しかないのに対し、競輪は3連単で504通りと非常に多くの目があるからだ。3連単は最も有利な賭け式だで述べたように、より多くの選択肢を与えるギャンブルが予想能力の高い者にとって有利になる、と私は考えている。儲けを出すには、多くの投票者、あるいはブッキーが十分過小評価した目に賭けることが必要である。選択できる目が多いと過小評価される目ができる可能性が高くなり儲け易い。この点でPSより競輪の方が有利なのだ。

控除率=4.5%、目の数=2のPSは、個人的にはかなりむずかしく感じる。控除率=25%、目の数=504の競輪の3連単の方が勝ち易いと思う。もっともこれはPSを実際やったことも分析したこともない私の印象なのであてにはならない*1。しかし同様に、競輪の分析をしたことのない者が、控除率だけを比べてPSの方が儲け易いと言うのも信用できない。

控除率が高いと真剣な客の割合が減るので、期待回収率の低下は緩和される

控除率が10%のレースギャンブルがあったとする。あるとき、競技の内容は全く同じで控除率だけが25%に上がったとする。客にとって不利になったのは明白だ。単純に考えると、ある投票者の回収率は10%のときに比べて75%/90%=0.83倍に低下する。しかし、予想能力の優れた投票者はそれほど大きくは低下しないと私は考える。その理由は、敵となる回収率の比較的高い投票者が少なくなるからだ。控除率が10%のとき回収率が100%近傍であった投票者の中には、25%と厳しくなると勝つことをあきらめて止めてしまう者が出るだろう。高い回収率を実現する者は、研究熱心であり儲けるという目的に対し真剣であるから、控除率が上がって自分の実力では勝てないと分かっているのに投票を続けるとは思えない。結果として、儲けることに対して比較的おおらかな客の比率が上がり、優れた投票者にとって勝ち易くなり、回収率の低下は0.83倍よりましになる。

控除率に相当するものが5%だとか10%のギャンブルで真剣に戦って勝ち負けしている者からすると、控除率が25%もある競輪は全く勝てないと思ってしまうのも当然かもしれない。しかし上で述べたように、ギャンブルの控除率の増加に対する儲けることの難易度の増加は逓減すると考えられるので、25%という数字から受ける印象ほど勝ちにくくはないのである。

そもそも誰も勝てないようなギャンブルは成立しない

誰も勝てないような性質のギャンブルは魅力がない。少数のプレイヤでも勝てるようにしておく方が客のやる気を刺激する。控除率が低いギャンブルなら、たとえスキルゲームでなくても、勝ちが比較的長く続く者が偶然出てくるから良い。しかし、控除率を25%と高くしてしまうと偶然勝ち続ける者が出る確率が著しく小さくなってしまう。偶然の散らばりを期待できないから、ゲームを複雑にし簡単に予測できないようにして、能力の高いプレイヤが勝てるようにする。ゲームを複雑にするとは言い替えれば、客にとってゲームをおもしろくすると言うことだ。競輪はその歴史の中でさまざまな修正を加えて、十分な複雑さを持ったスキルゲームとして存在してきたと思う。長い時間多くの人がやり続けている競輪は十分魅力があり、よって勝てる者が存在すると考えられる。

個人的な結論:必勝法は存在する

以上、控除率=25%の競輪でも勝つことは可能であるとの観点で論じてきたが、これらは言わば情況証拠に過ぎず、証明にはなってない。私自身も具体的に必勝法を見出しているわけではない。しかし、ここで行った議論、私がこれまで行った競輪の分析と投票の実践を総合すると、競輪で長期的に利益を出すことは可能であると確信している。

最後に念のため書いておくが、たとえ必勝法が存在したとしても、ギャンブルに参加する人のほとんどが負けて、長期的に勝つのはほんの一握りの少数であることは疑いようがない。ギャンブルに勝つのは並大抵のことではなく、もし真剣に勝ちたいなら相当な覚悟が必要だろう。

*1:NFLは大好きでよくテレビで観戦しているレベル