高額配当と売上げの関係

高額の配当が出ると客の資金の回転率が悪くなって以後のレースの売上げが落ちる、という説がある。高額の配当は的中票が少ないので当たった人も少なくてその少ない人に払戻金が集中する。的中者はもう大勝ちしたのでそのまま帰ってしまい場から大金が消えることになってその後のレースでは売上げが伸びないというわけだ。勝った人にはその勝金でまた車券を買ってもらい資金がよく回転する方が主催者側にとって都合が良い。個人的には大いに疑問だが、3連単は高配当が多いので3連単が売上げ低迷の原因だという人もいる。

高額配当が出るとその後のレースの売上げが減るというのは本当なのか、実際の記録をもとに調べてみた。

レース進行における売上げの伸び率

対象を最も売上げの多い3連単とする。ある日のある競輪場の第(n-1)レースの結果の配当倍率をr[n-1]としたとき第nレースの売上げ票数v[n]がどうなるかを調べると良い。しかし、売上げというのは競輪種類*1や場外発売の状況、レース番号などにより大きく異なるので、売上げそのものを比較するのは都合が悪い。そこで、一つ前のレースの売上げに対する伸び率dv[n]=v[n]/v[n-1]を考える。これなら条件による散らばりがv[n]より小さいだろう。

dv[n]をr[n-1]の値の範囲で分けて、それぞれの範囲でのdvの平均値を比べる。すなわち、前のレースで高配当が出たときとそうでないときで売上げの伸びに違いがあるかを見れば良い。

配当と売上げ伸び率の関係

2003年から2007年の5年間に行われたレースのうち150284レースを調べた。除いたのは天候不順などで途中順延になった日のレース、直前のレースが無い第1レースである。

(直前レースの配当倍率r, 当レースの売上げの伸び率dv)というデータの組を対象レース全てについて算出する。このデータをプロットしたいのだが、点の数が多過ぎて見にくい。そこで、データをrの順に並べ全体を50等分する。分けられたデータの各グループは同じ程度のrを持つことになる。各グループごとにrとdvの平均値の組を求め、得られた50個のデータをr-dv平面にプロットすると下図になる。

1つの点は3005レースの平均を表す。横軸は対数目盛を取っている。

図を見ると、直前レースの配当倍率が900倍近くまで大きくなると売上げの伸び率は小さくなる傾向がある。確かに、900倍以上の領域では高額配当と売上げ低下は相関があるようだ。しかし、配当倍率が40倍程度以下の低い領域では、反対に低額な配当ほど売上げ伸び率が低下する。

低額配当が売上げ低下となることのひとつの解釈として次のように考えられる。低額配当は的中票は多いのだが一部の人が大量に買うので払戻金が一部の人に集中してしまう。そんな本命大勝負をするような人は一日に何レースもやらないので勝金を持って帰ってしまい場から大金が消えてその後の売上げ低下となる。

このプロットをいろいろな条件を付けてやっていると次のような興味深いことが分かった。競輪種類をF1とF2だけでやると上図と同じような傾向のプロットになるのだが、G1、G2、G3でやると異なる形になる。G3以上のレースに限ってプロットすると下図になる。

サンプル数が少ないため、1つの点が400レースで計25点にしている。

上図を見ると高額配当領域での売上げ伸び率低下はあるが、低額配当領域で売上げ伸び率の低下はない。これはなぜだろう。よく分からないが、G3以上のレースはF1、F2と比べて売上げが非常に大きいことが関係しているような気がする。本命大勝負の人の張る金額が売上げに対して相対的に低くなるので与える影響が小さくなったとかいう解釈はどうだろう。

コメント

おもしろい相関を見つけたので書いてみた。注意すべき点として、ここで示した「高額配当が出た次のレースの売上げの伸び率は低下する」という傾向は、冒頭に述べた「高額配当は客の資金の回転率が悪くなって売上げが落ちる」という説と整合的ではあるが、その実証にはなっていないということだ。そもそも売上げの増減を統計的に分析したければ、売上げともっと相関の高い多くの要因を考慮しないといけない。

*1:特別、記念、普通とかの区分