筋車券の分析

競輪ではラインが重要でラインにおける位置(番手)が良い着に直結する。車券的にも、1、2着に絡む選手が同一ラインに属する可能性が高いことが大きな影響を与えている。ここでは、1、2着した選手のライン上の位置がどうなっているか、筋車券の発生確率などをレース記録から調べてみる。

並びデータ

KEIRIN.JPで公開されるデータだけでは周回中の並びが分からないので、ライン、筋車券の分析はできない。そこで並びデータを別に用意する必要がある。基本は、レース前にマスコミが予想の一部として提供される並びを収集する。他にも選手紹介や専門紙で公開されるレース結果などを利用する。具体的にはネットで競輪のデータを取得するに書いた通りだ。

ライン構成のデータの例を下に示す。

51 9 426 738

数字は車番で空白文字がラインとラインの境界を表す。"51"や"426"がラインで、"9"は単騎だが便宜上長さ1のラインとみなす。このようなデータが各レースに付属する。今回の分析で使うのは2006-2007年の2年間に行われたレースのうちの39891レースのデータである。

1着選手のライン上の位置

1着選手がライン上でどの位置にいたかをレースの割合で下表に示す。

先頭 2番手 3番手 4番手以降
レース数 19996 16030 3114 751
割合(%) 50.1 40.2 7.8 1.9

1着のうち半分はラインの先頭を走る選手である。番手が40%程で1、2番手がほぼレースを勝っている。競輪は番手が有利とよく言われるが、ラインの先頭で自力勝負している選手が勝つことの方が多い。

1、2着選手のライン上の相対位置

次に、1着と2着の選手のライン上の位置の関係を見る。

1、2着選手が同一のラインに所属しているレースの割合は、21616レース/39891レース=54.2%となる。1、2着が同一ラインの選手というだけでなく、さらに2人が前後に並んでいるという条件を付けると48.4%になる。より条件を絞った後者で筋車券を定義すると、筋車券はレースのほぼ半分で発生していることになる。

同一ラインの選手で1、2着したレースをさらに詳しく調べる。アルファベットを選手として"ABC..."と並んでラインを構成しているとして、1着選手-2着選手のパタン別の出現レースの割合を下表に示す。

A-B B-A B-C C-B A-C C-A その他の同一ラインの組み合わせ 全て
レース数 8404 6405 3034 1059 1108 524 1082 21616
割合(%) 21.1 16.1 7.6 2.7 2.8 1.3 2.7 54.2

筋車券の代表的な組み合わせであるA=B、B-Cの3つのどれかで44.7%のレースが決着している。もっとも多いのは先頭選手が1着のA-Bになっている。ズブズブ(B-C)はズブ(B-A)の半分程度である。

異なるラインの選手で1、2着したレースの内訳をみる。ライン"ABC..."を想定して、1着選手-2着選手のパタン別の出現レースの割合を下表に示す。ここではパタンX-YのXとYは異なるラインに属する選手である。

A-A A-B B-A B-B A-C B-C その他の異なるラインの組み合わせ 全て
レース数 5159 3869 2847 2518 1028 837 2017 18275
割合(%) 12.9 9.7 7.1 6.3 2.6 2.1 5.1 45.8

全体に分布がなだらかでラインの位置との関係が薄く力の決着となっているようだが、やはり先頭選手Aが絡む場合が多い。

S級とA級の違い

これまで述べたことをS級とA級で別々に集計してみると大きな違いは見られない。例えば、1、2着選手が同一のラインに所属しているか、すなわち筋車券の発生割合は、

S級 A級 全体
同一のライン (%) 53.0 54.7 54.2
同一のライン & 前後に並ぶ (%) 47.7 48.7 48.4

となって級による差はほとんど無い。これは意外である。S級では実力伯仲のレースが多く選手の勝利への執着も強くてレース展開も複雑であるから筋違いの車券が良く出る、なんて言うのをよく聞いたり読んだりするし、直感的にはA級の方が筋で決まってる気がする。このような記録の集計と印象のギャップがなぜ生じるかは不明だが非常に興味深い。