予想方式の重勝式(2)

前に予想方式の重勝式で書いた内容に誤りがあったのでここで訂正する。

キャリーオーバーがvc票分あって売上がv票のとき、回収率の期待値Eは、

E = 0.75 + vc / v   ... (1)

であるとしていた。これは、目fの投票数がv[f]のとき、目fが出現する確率をv[f]/vで近似できると仮定して導出したが、この仮定は成立しない。

間違いのポイント

最大の配当倍率Rは的中票が1票だった場合で、R=0.75*v+vc倍となる。よって確率pで出現する目の車券の期待回収率の上限はR*pとなる。したがって、ある目f1の期待回収率をeとするとき、的中率e/R未満の目の期待回収率はe未満となる。目f1で回収率eを期待できるときに、e未満の回収率しか期待できない目を買うことは不合理であるから、的中率e/R未満の目の投票数は0になる。これは目fが出現する確率をv[f]/vとみなせないことになる。

1/Rというのは非常に小さい数である。だから通常の賭け式なら的中率が1/Rオーダー以下の目が的中することは極めて稀なので無視してもかまわない。しかし重勝式では目の数が非常に多いので、非常に小さな確率でもそれらを全て足し合わせるとある程度の大きさになる。すなわち、的中率が1/R程度以下の目のどれかが的中することが普通に起こるのである。

的中率が1/R程度以下の目が的中することは十分あるのにそこには誰も賭けないということは、その分的中率の高い目が過剰に買われることになる。よって、期待回収率は(1)式で算出される値より低くなる。

期待される回収率

以上の認識の元に回収率の期待値を考えてみよう。まず、次の仮定を置く。

  1. 投票者は全ての目の的中率を知っていて儲けるため合理的に投票する
  2. 総投票数vは事前に決められている

2番目の仮定は、これがないと計算できないので仕方なく設定している。現実にはもちろんこんな条件は無い。売上げは過去の記録からある程度推測できるだろうから近似的に認めて良いだろう。

まず1番目の仮定より、投票された目の期待回収率は全て同一になる。もしある目の回収率が他の目より良かったらその目が買われて安くなり他の目と同じ回収率になっていく。その同一の期待回収率をEとする。前節に述べたように、配当倍率には上限があるのである的中率pc未満の目の投票数は0になる。pcは次の式を満たす。

E = pc * min(0.75 * v + vc, Rmax)  ... (2)

ただし、min()は引数のうち最小のものを返す関数、Rmaxは既定の最大配当倍率で例えば平塚チャリロト・セレクトでは6億円/100円=6e6倍である。

投票数が0でない目のどれかが的中する確率qは、

q = Σp>=pc p  ... (3)

となる。

目fの的中率はv[f]に比例し、全ての目について和をとるとqになるから、p[f]=q*v[f]/vとなる。目fの配当倍率は(0.75 * v + vc) / v[f]だから、期待回収率は

E = p[f] * (0.75 * v + vc) / v[f] = q * (0.75 * v + vc) / v  ... (4)

となる。式(2)、(3)、(4)をE、pc、qを未知数とする連立方程式として解けば期待回収率Eが求まる。

実際に数値を与えて期待回収率Eを求めてみよう。まず全ての目の的中率がいる。前のエントリでやったように、2007年の2車単のオッズから1着で売れている票の割合を算出してその占有率順位で勝率を予測しその値を元に全ての目の的中率を推定する。次にvとvcだが、平塚チャリLOTOがもう始まっているのでその記録を使おう。4月18日実施の第3回チャリロト・セレクトに従い、v=61846票、vc=70006.5票とする。プログラムを書いて方程式を数値的に解くと、E=0.857、pc=7.33e-6、q=0.455が得られる。前回までのキャリーオーバーvcが当回売上げvと同じ程度もあるのに期待回収率Eは1.0には届いていない。ちなみに間違った(1)式によるとE=1.88となってしまう。また、1-q=0.545はキャリーオーバーが発生する確率である。

この数値はいろいろな仮定や不確定なパラメタを元に算出しているので実際の値とはずれがあり大きく違っている恐れもある。そもそも理論が間違っているかもしれない。そのことの承知を十分お願いした上で、次回チャリロト・セレクトの期待回収率を敢えて推定してみよう。次回はvc=116391.0票である。目の的中率は上の例と同じ2007年の2車単オッズからの推定を使う。vを変化させてEをプロットすると下図になる。

売上げが第3回と同じ程度の600万円位だと十分1.0を越える。高い回収率が期待されて売上げが大幅に増える可能性がある。