素朴な競輪経営論

近年の売上げ減少を悲観して「10年後には競輪はなくなっているかもしれない」というような意見がネット上でしばしば聞かれる。このような競輪の全体の経営が近い将来に立ち行かなくなってしまうという予測には、私は大いに疑問を持っている。単純に考えれば、経営の規模を縮小すると十分利益を確保できるからだ。刑法で一般に禁じられた賭博を独占的に行える権利は、今でもあるいは将来に渡ってもおいしいと思う。

需要減少

売上げが減ってきているというのは競輪への需要が減っているということだ。原因はよく言われるように、経済情勢の悪化、娯楽の多様化などだろう。需要を増やすような対策をやっているのだろうがなかなかうまくいかない。

しかし、需要がゼロに近付いていくことはないだろう。ギャンブルは世界中どこでもいつでもさかんに行われている。そして日本で合法的なギャンブルは公営競技だけで、事実上認められているパチンコと合わせても、種類が限定されている。この状況で競輪だけが需要ゼロになるとは考えられない。

ある産業が亡びてしまうというのは、新しい技術による新商品が現れて従来品の需要がゼロになってしまったとか、外国から安い商品が大量に入って来て全く競争できないという場合だろうが、賭博が一般に法律で禁止されている以上そんなことにはならない。

供給過剰

需要が減っていて簡単に回復するのが無理だとすると、供給を減らすしかない。現状はレース数の供給が過剰である。利害関係の調整はむずかしいと思うが、供給を減らして利益は確保あるいは増大する方法は簡単だ。なぜなら、今の競輪は特別や記念などの上位選手によるレースに売上げが集中し、ヒラ開催はほとんど赤字なので、下位のレースを止めれば良い。レース数を減らすと当然売上げは減るが、なくすのは下位のレースなので赤字が減って返って利益は増える。

レース数を減らすことは、施行者、競輪場、そこで働く職員、および選手の数を減らすことになる。すなわち、競輪の受益者の一部にやめてもらうわけだ。

将来展望

可能性はうすいが、売上げが回復して現体制が維持されるかもしれない。競輪界で非常に効果的な対策が行われるとか、経済情勢が一気に好転するとかあるかもしれない。こうなったら万々歳だ。

しかし実際は、売上げがじりじり下がる傾向が続く可能性が高いだろう。そうなると、赤字に耐えられなくなった競輪場が徐々に廃止になっていき、それに伴って選手の数も減るだろう。これによって上に書いた供給過剰が緩和されていき、どこかで縮小が収まるはずだ。競輪場が全てなくなってしまうことはなく、全体の規模は小さくなるが競輪は今より安定して経営されるだろう。

競輪場がいくつかつぶれた上で景気が良くなると、残った競輪場はおいしいかもしれない。衰退した英国を甦らせたサッチャー改革みたいなことが日本でないとは限らない。赤字でも施行者がなかなか止めたがらないのは、保障問題が困難だからだけではなく、長期的にこんな夢を追っているのかもしれない。

競輪場は減らさずに選手だけ減らせ、という人もいるが、これは常識的に考えて無理だ。こんな施行者まる儲けの話をストや訴訟を普通にやる選手会相手にどうやって交渉するのだろう。また、競輪場が減って競輪場当たりの利益が増えた方が、施設への投資の効率もよくなるメリットがある。

以上、私が素人なりに考えた単純素朴な競輪経営の将来だ。最悪のシナリオでも規模が小さくなって競輪は続くと思う。現状は困難だが、やたらに恐れたり危機を煽る必要はないだろう。

個人的には、なるべく競輪場はなくなってほしくないし、A級下位のレースの車券もずっと買いたいと思っていることを付け加えておく。