3着を当てるのはむずかしいか?

3連単は最も有利な賭け式だで書いた通り、儲けるという目的において3連単がもっとも適しており、従って3着を良く考えて選択することは非常に重要であると私は思っている。しかし、3連単が競輪に導入され始めた頃は、3着を当てるのは1、2着に比べてむずかしく、考えても無駄じゃないかという印象を持っていた。競輪競走はライン単位で展開するので、2着は筋で決まるにしろそうでないにしろ予想しやすく必然性がある気がしていた。それに対し、3着を決める要因としてラインの影響はかなり薄まっており、予測困難なレース展開のあやによる偶発性に支配される割合が大部分を占めるのではないかと感じていたのだ。このような「3着はむずかしく、考えても無駄」という考えは、ひょっとすると一般的なのかもしれない。競輪ブログに書かれている予想などを見ると、3着は流したり手広くいったりしているのがよくあるからだ*1

本エントリでは、3着を当てるのが本当にむずかしいのか、3連単のオッズの記録を分析することで考えてみる。

占有率1位

あるレースにおいて、3連単の得票分布がdist(x, y, x)で与えられるとする。例えば、dist(1, 2, 3)は目1-2-3に投じられた票数である。また、そのレース結果は、1着がf1番車で、2着がf2番車、3着がf3番車であったとする。面倒なので同着は考えないことにし、9車立てのみ対象とする。

そのレースにおける「1着の占有率1位」とは、3連単のオッズで最も1着で売れている選手のことである。すなわち、1〜9のiに対して、Σ(全ての可能なx,yの組合せ)[dist(i,x,y)]を算出してその値が最大になるiが占有率1位の車番になる*2

次に、「2着の占有率1位」とは、3連単のオッズで、実際に1着になった選手から最も2着で売れている選手をいう。すなわち、1着の車番f1以外の1〜9のiに対して、Σ(f1,i以外のj=1〜9)[dist(f1,i,j)]を算出してその値が最大になるiが2着の占有率1位の車番になる。

同様に、「3着の占有率1位」は、3連単のオッズで、実際に1着-2着になった選手から最も3着で売れている選手である。すなわち、f1,f2以外の1〜9のiに対して、dist(f1,f2,i)を最大とするiが3着の占有率1位の車番になる。

以上のように定義された1〜3着の占有率1位の選手が、それぞれ実際に1〜3着になったとき的中とする。数多くのレースについて各占有率1位の的中率を調べる。

占有率1位の的中率

2008年に行われた9車立てで、3着までに同着がなかった31885個レースについて、1〜3着の占有率1位の選手の的中率を集計した結果を下表に示す。チャレンジレース、A級1,2班戦、S級戦に分けての集計も行った。

分類 レース数 1着の占有率1位の的中率(%) 2着の占有率1位の的中率(%) 3着の占有率1位の的中率(%)
全体 31885 38.2 43.6 36.9
チャレンジ 7774 50.8 46.2 38.2
A級1,2班 16620 35.0 42.9 37.2
S級 7491 32.1 42.4 34.8

まず全体を見る。1着の占有率1位の的中率(以下、1着的中率などと略す)は38.2%であり、2着的中率はこれより5.4ポイント高い43.6%である。1着選手を限定した上で2着選手を当てることは、1着選手を当てるよりも高い精度で予測できることを示している。ラインの存在が2着を当て易くしているのだろう。3着的中率は36.9%で2着的中率を大きく下回る。3着ではラインの影響が小さくなるということだろうか。しかし、1着的中率に比べると1.3ポイント低いだけで大きくは変わらない。1、2着を限定した条件で3着を予測することは、1着を当てることとほとんど同じ位の精度があると言える。

次に、級班別の集計だが,目立つのはチャレンジの1着的中率が50%にも及ぶことである。チャレンジは本命レースが多い印象だったがこれ程とは驚きだ。A級1,2班、S級では、3着的中率が1着的中率を少しだが上回っている。極端に堅いレースの多いチャレンジを除けば、3着は1着より若干当て易いくらいなのだ。

結論

3着は1着とおおむね同じくらいの精度で予測することが可能である。だから「3着はむずかしく、考えても無駄」とは言えない。

*1:もっともこれは、3着をはずして高配当を取り逃がす悔しい思いだけは避けたい、という心理ゆえかもしれない

*2:Σは和を取る記号で、Σ(range)[exp]は式expをrangeで与える範囲に渡って和を取ることを意味する。例: Σ(i=1〜10)[i] = 55