記念の準決勝AはBより本当に有利か?

記念競輪の準決勝は4個レースあり、上位3人が決勝に行ける準決勝Aが2個レース、上位2人の準決勝B、上位1人の準決勝Cが各1個レースの構成になっている。単純に考えれば、決勝進出の人数が多いAが有利でB、Cがそれに続くことになる。準決勝への勝ち上がりでは上位の着の選手から順にABCに振り分けられるので、概定番組でも決勝進出はABCの順に有利であるという考えに基づいていることが分かる。

本エントリでは、決勝に勝ち上がるのに準決勝はABCの順に有利である、と本当にそう言えるのか考えてみる。

AがBより有利でない場合とは?

2日目に行なわれる準決勝への勝ち上がり(2次予選A、2次予選B、優秀)では上位の着の選手がAに行くので、Aには強い選手が集まる。すると、きついメンバで3着までのAと、比較的軽いメンバで2着までのBでは、Bの方が決勝に勝ち上がりやすくなる可能性が出てくる。これはAとC、BとCでも同様であり、以下AとBで説明する。Aに強いメンバが集まる程、Aは決勝進出に不利になる。

仮に、Aに強いメンバが集まり過ぎてBの方が決勝進出に有利になったとしよう。すると、優勝を目指すような強い選手の中には、AよりBに行きたいと思う者が出てくるだろう。そういう選手は、B進出をピンポイントで狙うことは難しいとしても、少なくとも無理にAを狙うことはしないだろう。その結果、強い選手がBに回ることが多くなり、決勝進出に対するBの有利さは薄れる。最終的には、決勝進出しやすさはA、Bとも同じくらいになって平衡点に達するだろう。

成績評価値ごとの決勝進出の割合

実際の記録からABCの有利さはどうなっているか調べてみよう。2003年から2007年の5年間に行なわれた記念の準決勝ABCの700レースを対象とする。ただし、9車立てでないレースや長期休場明けの選手がいるレースは除外している。これらのレースに参加した選手を直近4ヵ月の成績評価値で分類して、その各カテゴリの選手ごとに決勝進出した割合を算出する。ここで成績評価値というのは、「競輪選手の成績の評価値」で述べたもので、成績から割り出した選手の強さを示す値である。この評価値のカテゴリを各カテゴリの選手数が同じになるよう以下のように4つに分けた。

カテゴリ 評価値の範囲 選手数
1 ~ 12.05 1575
2 12.05 ~ 1575
3 13.19 ~ 1575
4 14.47 ~ 1575

カテゴリ4が上位の選手で順当に行けば決勝進出が期待できる強い選手である。このカテゴリ別に準決勝ABCそれぞれの決勝進出の割合(以下、決進率と呼ぶ)を集計したのが下表である。

カテゴリ 準決A 準決B 準決C
1 0.096 0.058 0.031
2 0.156 0.204 0.078
3 0.329 0.251 0.221
4 0.526 0.516 0.392

この表から以下が見てとれる。

ABCとも強いカテゴリ程、決進率が上がっている
この点は当然ながら妥当である。
Cの決進率はどのカテゴリでもBより低い
BよりCが有利という逆転減少は起こっていない。Cの決勝進出は1人のみというのはかなりきつい条件だと言える。
カテゴリ4では、AとBの決進率がほとんど同じ0.52前後である
これは先に述べたように、Aに強いメンバが集まり過ぎるのを緩和するような走りを、このカテゴリの選手がしていることを示していると思える。おしなべて見れば、上位選手にとって準決勝はAでもBでも決勝に行ける可能性は同じである。
カテゴリ2では、BがAより高い決進率である
このカテゴリではBの方がAより0.204/0.156=1.31倍も決進率が高い。なぜこうなるかは簡単には分からない。Bは1個レースしかないので、メンバ構成の有利/不利に散らばりが大きく、平均以下の強さの選手にとっては有利にはたらくことが多いのかもしれない。

コメント

今回調べて、必ずしもAがBより有利であるとは言えないことが分かった。だからと言ってただちに記念の概定番組がおかしいとはならないが、個人的には、準決勝は対称的な3個レースで構成される方が分かりやすくて良いと思う。